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名古屋地方裁判所 昭和42年(わ)264号 判決 1967年10月31日

本籍

名古屋市北区芦辺町二丁目七番地

住居

右同

梱包用テックス製造販売業

太田茂

昭和四年五月一五日生

右の者に対する昭和四〇年法律第三三号による改正前の所得税法違反被告事件につき、当裁判所は検察官笹岡彦右衛門出席のうえ審理を遂げ、次のとおり判決する。

主文

被告人を懲役一年及び罰金六〇〇万円に処する。

右罰金を完納することができないときは、金一万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

ただし、この裁判確定の日から三年間、右懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、昭和二八年頃から電気器具等の包装用緩衡材である梱包用テックスの製造販売業を実母たけから引継ぎ、丸茂商会の屋号で引続き個人経営してきたものであるが、所得の一部を秘匿して所得税を免れようと企て、

第一、昭和三九年三月四日、所轄東税務署において、同署長に対し、昭和三八年度における所得税の確定申告をするに当り、同年中の実収の総所得金額は三、一五五万九、二四〇円(これに対する所得税額は一、五四八万六、七六〇円)であるのに拘らず、営業所得及び配当所得を圧縮計上し、これを一二三万五、七七八円(これに対する所得税額は九万二、〇三〇円)と虚偽の記載をした所得税確定申告書を提出し、もって不正行為により正規に納入すべき所得税額を右申告にかかる虚偽の総所得金額にもとづき算出される所得税額との差額一、五三九万四、七三〇円の所得税を免れて逸脱し、

第二、昭和四〇年二月一五日、所轄北税務署において、同署長に対し、昭和三九年度における所得税の確定申告をするに当り、同年中の実際の総所得金額は一、九六七万二、〇六四円(これに対する所得税額は九〇五万三、四四〇円)であるのに拘らず、総所得の金額を計上せず、かつ前同様営業所得及び配当所得を圧縮計上し、これを一一〇万五、六〇四円(これに対する所得税額は六万八五三〇円)と虚偽の記載をした所得税確定申告書を提出し、もって不正行為により正規に納入すべき所得税額と右申告にかかる虚偽の総所得金額にもとづき算出される所得税額との差額八九八万四九一〇円の所得税を免れてほ脱したものである。

(証拠の標目)

一、被告人の当公判廷における供述

一、被告人の検察官に対する供述調書五通

一、被告人の大蔵事務官に対する質問てん末書九通

一、被告人作成の昭和四一年一二月一五日から昭和四二年二月一四日までの日付にかかる上申書一一通

一、名古屋国税局収税官吏大蔵事務官国枝為則作成の「脱税額計算書説明資料」二部

一、名古屋国税局収税官吏大蔵事務官野村宏彦作成の「脱税額計算書」一通

一、名古屋北税務署長大蔵事務官松下一蔵作成の「証明書」二通

(売上関係につき)

一、田中豊吉(聯合紙器(株)名古屋営業所庶務経理課長)作成の上申書(但し仕入関係も含む)

一、臼田松二(聯合紙器(株)清水営業所庶務経理課長)作成の上申書

一、越中忠(松下精工(株)管理部経理課経理係長)作成の上申書二通

一、横田美樹(関西紙器(株)総務課会計係長)作成の上申書

一、木村友治(押谷産業(株)経理担当者)作成の上申書

一、八木賀蔵(有限会社丸八製紙工場代表取締役)作成の上申書

一、今木夘一(株式会社八宝商会経理部長)作成の上申書

一、長谷川博(東海紙器(株)取締役社長)作成の上申書

一、宇佐美数英(三栄段ボール工業(株)総務部長)作成の上申書

一、被告人作成の昭和四一年九月三〇日付上申書二通

一、笠島正之(松下電気産業(株)電機事業部経理課)作成の上申書

一、押収してある売上帖七綴(昭和四二年押第一二四号の一ないし八)

(仕入関係につき)

一、北村水一(紙器テックス製造業)作成の上申書

一、伊藤斐(株式会社大同商工常務取締役)作成の上申書

一、太田保徳(硬質紙器製造業)作成の上申書

一、関下三次(原紙業)作成の上申書

一、鈴木茂(協和銀行大曽根支店支店長)作成の「太田茂架空名義定期預金移動明細及び太田茂名義当座預金受払明細」と題する書面

一、石田光二作成の回答書

一、伊藤万里子(興亜商事(株)代表取締役奥村亀忠)作成の「取引状況の回答について」と題する書面

一、佐野昭雄(佐野木造製作所)作成の「取引状況の回答について」と題する書面

一、辻政美(大栄紙業(株)代表取締役辻浜治)作成の「取引状況の回答について」と題する書面

一、星加清吉(中部原材料(株)代表取締役)作成の取引状況回答書

一、水谷敏夫(水谷製紙原料(株)代表取締役)作成の上申書

一、辻広(原紙製造業)作成の上申書

一、南早苗(島屋商事(株)代表取締役安江宏)、石山四郎(日本耐酸壜工業(株)代表取締役堤俊治)及び、浜崎善弘外一名(株式会社服部産業代表取締役服部起六)各作成の「取引状況の回答について」と題する書面三通

(運賃関係につき)

一、関本丈(西濃運輸(株)大曽根営業所会計係)作成の上申書

一、白川昭男(近鉄運輸(株)北営業所)作成の回答書

一、石原茂雄(山陽自動車運送(株)名古屋支店支店長)作成の回答書

(消耗品費関係につき)

一、大橋規久子((株)三光商会)作成の回答書

一、西川姿市(有限会社西川商店代表取締役)作成の回答書

一、服部和美(林物産(株))作成の回答書

一、野々川宗之(合資会社山宗金物店代表社員)作成の回答書

一、若山兼蔵(有限会社山久金網店)作成の回答書

一、岡田正市((株)岡田商会代表取締役)作成の回答書

一、朝稲勝彦(日本ポリセロ工業(株)経理部)作成の回答書

一、水野敏一(合資会社水野石油代表社員)作成の回答書

一、丹下稔(一光石油販売(株)代表取締役矢野学幸)作成の回答書

一、松山誉子(天一商店経理係)作成の上申書

(修繕費関係につき)

一、高橋しづ(高橋熔接工業所)作成の上申書

一、村手昇春((株)オリモク)作成の回答書

一、倉知博(協和製紙起業(株)取締役社長)作成の「取引状況の回答について」と題する書面

(水道光熱費関係につき)

一、高木巖(名古屋市水道局業務部北業務所事務虞員)作成の回答書

(雑費関係につき)

一、三輪善一(合資会社臼井竹材店)作成の回答書

一、加藤克己((株)千代田組名古屋支店支店長工藤邦夫)作成の回答書

(支払利息関係につき)

一、酒井孝導(中央相互銀行東郊通支店支店長小島音治)作成の「証書貸付元帖」写及び「商業手形元帖」写各一綴

一、溝将之(協和銀行大曽根支店支店長鈴木誠)作成の「手形貸付金元帖」写一綴

一、名古屋国税局収税官吏大蔵事務官西山昭作成の昭和四一年一二月一〇日付「調査報告書」二通

一、溝将之(前記に同じ)作成の「預金担保貸付金元帖」写一綴

一、田辺芳郎(岐阜相互銀行金山橋支店支店長田中一夫)作成の「手形貸付金記入帖収計算書控」写一綴

(配当所得関係につき)

一、米沢和子(川崎航空機工業(株)株式課長松本爾郎)作成の回答書

一、横松正隆(近畿日本鉄道(株)総務部株式課)作成の回答書

一、長尾昌男(東洋信託銀行(株)大阪支店証券代行部長加茂卓郎)作成の回答書

一、野地利郎(中央信託銀行(株)証券代行部神田分室管理課管理係)作成の回答書

一、杉浦(住友信託銀行(株)東京証券代行部)作成の回答書

一、千賀威寛((株)豊田自動職機製作所総務部株式課)作成の回答書

一、落合清盛(東洋信託銀行(株)証券代行部長)作成の回答書一八通

一、平野功(中央信託銀行(株)名古屋支店証券代行部責任者玉崎允三)作成の回答書三通

一、稲葉太郎(日本コンデンサ工業(株)株式課長)作成の回答書

一、田谷稔(中央信託銀行(株)証券代行部池田山分室管理課)作成の回答書三通

一、河原潔(日本食品加工(株)総務部総務課)作成の回答書二通

一、中条康夫(中央信託銀行(株)大阪支店証券代行部管理課長)作成の回答書

一、服部国雄(豊和工業(株)取締役社長野崎信義)作成の回答書

一、西川昭一(三菱電機(株)総務部株式課長坂本亘平)作成の回答書

一、秦真知雄(三井信託銀行(株)証券代行部)作成の回答書

一、林勇夫(中央信託銀行(株)証券代行部神田分室管理課)作成の回答書

一、本山重則((株)小糸製作所代表取締役小糸久弥)作成の回答書

一、中野芳幸(住友信託銀行(株)本店証券代行部登録課長)作成の回答書

一、小西征治(三菱信託銀行(株)証券代行部)作成の回答書二通

一、仙波清則(住友信託銀行(株)東京証券代行部)作成の回答書

一、富田徳郎(アイシン精機(株)代表取締役岩藤次郎)作成の回答書

一、林誉六(宇部興産(株)株式課長)作成の「株式名義人並に配当金について)と題する回答書

一、友田喜代一((株)大隅鉄工所総務課次長)作成の回答書

一、青木弥生(安田信託銀行(株)証券代行部登録課)作成の回答書

一、村瀬建尚(東洋信託銀行(株)名古屋支店証券代行部部長寺角英男)作成の回答書二通

一、水野康二郎(中央信託銀行(株)証券代行部管理課)作成の回答書

一、下村一男(東京証券代行(株)管理係長)作成の回答書

一、関根辰夫(大和証券(株)名古屋支店)作成の「有価証券募集日記帖及び有価証券売買日記帖」写一通

一、同人作成の「受渡経理報告書」写一通

一、早川嘉夫(日興証券(株)名古屋支店)作成の「株数預り有価証券元帖」写三通

一、十河和(日興証券(株)大阪駅前支店)作成の証明書

一、林賢明(大和証券(株)名古屋支店管理課長)作成の「第二オープン分配金」と題する書面

一、石部巖造(大和証券(株)名古屋支店)作成の「投資信託申込証拠金領収証」写一通

一、鈴木正次(大井証券(株)名古屋支店)作成の「有価証券売買日記帖等抜粋及び収益金明細」一通

(総所得につき)

一、鈴木正次(右同)及び水谷敏夫各作成の上申書二通

(仕入その他諸経費等につき)

一、押収してある「昭三十八年度、九年度調べ表」と題する調査資料綴一冊(昭和四二年押第一二四号の九)

一、押収してある「請求書、領収書綴」五冊(同押号の一〇ないし一四)

一、押収してある「健康保険、税金、領収証書」と題する綴一冊(同押号の一五)

一、押収してある通帖(観音寺所有地の地代にかんする)一冊(同押号の一六)

一、「地代覚帖」と題するノート一冊(同押号の一七)

一、押収してある領収書四枚(同押号の一八)

(法令の適用)

被告人の判示各所得税ほ脱の所為は、いずれも昭和四〇年法律第三三号所得税法附則第三五条により、同法による改正前の所得税法第六九条第一項に該当するところ免れた所得税の額が五〇〇万円をこえ、情状同条第二項を適用する場合に終るので懲役刑と罰金刑とを併科し、以上は刑法第四五条前段の併合罪の関係にあるから、懲役刑については同法第四七条本文、第一〇条に従い犯情の重いと認める判示第一のほ脱犯の刑に法定の加重をなし、罰金刑については同法第四八条第二項を適用し、その刑罰及び金額の範囲内において被告人を懲役一年及び罰金六〇〇万円に処し右の罰金を完納することができないときは、同法第一八条により金一万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置し、諸般の情状により同法第二五条第一項を適用してこの裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予することとする。

よって主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 小川満 裁判官 平野清 裁判官 三村鍵治)

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